投資した不動産の売却を検討する際に、特に譲渡益が出るような場合には、買換えを行った場合の税制上の特例措置を事前に把握しておくとよいでしょう。ここでは2つの特例措置について触れていくことにします。
1.特定の事業用資産の買換えの特例
「特定の事業用資産の買換え特例」とは、個人が特定の不動産等(譲渡資産)を平成20年12月31日までに売却(譲渡)し、一定期間内(原則、譲渡した年の12月31日まで)に特定の不動産等の資産(買換え資産)を取得し、その取得の日から1年以内に新たに取得した資産を事業の用に供した場合に適用を受けることができます。この特例を受けた結果、買換え代金が売却(譲渡)代金以上の時は、売却代金に20%を乗じた額を譲渡収入金額とするなどして課税譲渡所得金額の計算を行います。買換え代金が売却(譲渡)代金より少ない時には、その差額と買換え代金に20%を乗じた額との合計額を譲渡収入金額とするなどして課税譲渡所得金額の計算を行います。
<特定の事業用資産の買換えの特例における課税譲渡所得金額の計算>
譲渡代金≦買換え代金 |
譲渡代金>買換え代金 |
譲渡代金×20%−
(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20% |
譲渡代金−(買換え代金×80%)
−譲渡資産の取得費×
(譲渡代金−買換え代金×80%)/譲渡代金 |
なお、“特定の事業用”とは、不動産投資のように、土地や建物の貸付けを行う事業の場合、それが「事業的規模」であるか、もしくは、減価償却費、固定資産税等の必要経費を差し引いた後でも「相当な利益」が出ていて、かつ、「継続的に貸付けが行われている場合」であることが要件となります。事業的規模とは、マンションやアパートであれば10室以上、独立の貸家なら5棟以上というのが基準となります。
また、「譲渡資産」と「買換え資産」とが、一定の組み合わせに当てはまる必要があります。詳細は、
国税庁のホームページをご参照ください。
2.固定資産の交換の特例
個人が、土地や建物などの固定資産を同種の固定資産と交換する際に、一定の要件を満たすと譲渡がなかったものとするような特例のことを「固定資産の交換の特例」といいます。交換する譲渡資産(交換譲渡資産)の時価が、新たに取得資産(交換取得資産)の時価以下であれば、譲渡所得は生じないことになります。ただし、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 交換譲渡資産及び交換取得資産は、いずれも固定資産であること(不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません)。
- 交換譲渡資産及び交換取得資産は、同じ種類の資産であること。同じ種類の資産というのをカテゴリーで分けると、土地に関するものとして「土地・借地権および耕作権」、建物に関連するものとしては、「建物、建物附属設備及び構築物」となります。
- 交換譲渡資産は、1年以上所有していたものであること。
- 交換取得資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
- 交換取得資産を、交換譲渡資産の交換直前の用途と同じ用途(居住用、店舗又は事務所用等)に使用すること。
- 交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。
「固定資産の交換の特例」は、課税の繰り延べの制度です。交換取得資産を将来売却する時の譲渡所得の計算の際には、交換取得資産ではなく交換譲渡資産の取得費や取得日を引き継ぐことになる点などには留意しておく必要があります。