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14.不動産取得時に知っておきたい法律知識(I)
   〜不動産の賃貸に関する法律知識〜
 今回は、不動産投資を行う上で事前に知っておきたい建物の賃貸借契約に係る法律知識について見ていくことにします。建物の賃貸借契約とは、賃貸人(貸主)が賃借人(借主)に建物を使用収益させ、これに対して賃借人が賃料を支払う(=有償)ことを約束することによって成立する契約のことをいいます。契約を締結すると以下のとおり、賃貸人と賃借人双方に様々な権利と義務が発生します。ここでは、賃貸人(貸主)の権利と義務について触れていくことにします。
(1) 賃貸人(貸主)の権利と義務
 貸主には、使用収益の対価として借主から賃料を請求する権利や借主が建物を明渡す際に原状回復することを請求できる権利があります。貸主の義務としては、主には以下の4つがあります(特約で排除できる場合もあります)。

1.建物を使用収益させる義務
 例えば、マンション(区分所有建物)の場合、専有部分を使用収益させ、また各入居者が共同で使用する廊下やエレベーター、駐輪場、ゴミ置場といった共用部分を必要な範囲において使用させる義務を負うことになります。

2.建物の修繕義務
 貸主は、建物を使用収益させる義務があるので、建物が破損した場合などには必要な修繕を行う義務があります。この修繕義務は、貸主の故意または過失によるものだけでなく、天災によるものや、契約の当事者以外の第三者の責任によるものでも負うことになります。
 ただし、具体的にどのような場合にどこまでの修繕義務を負うのかについては、法律に明確な規定がありません。また、民法上では修繕義務に関することは、原則として当事者間の合意により、任意に変更できると解されているため、当事者間の合意のもとに特約で修繕義務を免除もしくは軽減できるというのが一般的な見解となっています。

3.必要費償還義務
 必要費とは、借主が雨漏りの修繕や水道管の修理といった、建物を使用収益するための維持・管理(保存)に必要な費用のことをいいます。借主が必要費を負担した場合、貸主は直ちにその費用全額を償還しなければなりません。本来は、貸主に建物の修繕義務があるところを代わりに借主が修繕したといった理由からです。ただし、特約で修繕義務が免除されている場合は、借主は必要費の償還請求はできません。

4.有益費償還義務
 有益費とは、建物(賃借物)を改良および客観的な価値を増加させるための費用のことをいいます。汚れた壁紙やカーペットの張り替えのための費用などが該当します。庭の除草等、使用収益そのものに要した費用は、たとえ改良する結果となったとしても有益費とはみなされません。造作(※)とも異なります。借主が有益費を負担した場合、賃貸借契約終了時に有益費全額(実費)もしくは賃借物の価値の増加額のいずれかを貸主の選択により償還しなければなりません。ただし、特約で借主の償還請求権が免除されている場合は、借主は有益費の償還請求はできません。

(※)借地借家法の造作買取請求権
 借家法(旧法)では、家主の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作(エアコンや雨戸等)があるときは、借家人は契約が終了した時に家主に対して時価で買い取るよう請求できるとされていました。しかし、借地借家法(新法)では、これを任意規定とし、特約で排除(家主が造作を買い取らなくてもよい)できるようになりました。

(2) 敷金の取り扱い
 敷金や保証金等の金銭は、授受の目的がさまざまであり、地域によっても取り扱いが異なります。事前に、契約が終了した場合の返還の要否などを契約書の中に明確に定めておくことが、トラブルを回避するためには必要といえます。ここでは敷金の概要と留意点について触れていきます。
 敷金は、賃借人の債務(賃料を支払う)を担保する目的で賃貸人に預けておく金銭です。賃借人に債務の未払いがない限り、賃貸借契約の終了の際に返還されます。この敷金と退去時における原状回復に関するトラブルが多いため、平成16年9月に東京都は「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を発表し、10月1日から「賃貸住宅紛争防止条例」として施行されました。この条例は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を基づいて作成されている為、東京都だけに限った話とは一概には言えないことになります。以下、東京都のガイドラインのポイントを見ていきます。

1.貸主の費用負担
 賃貸住宅の契約において、通常損耗(通常の使用に伴って生じる程度の損耗)や経年変化(時間の経過に伴って生じる損耗)などの修繕費は、上で触れたとおり、貸主が負担するのが原則となります。具体的には、壁に貼ったポスターや絵画の跡、家具の設置によるカーペットのへこみ、日照等による床、畳やクロスの変色、テレビの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)、クリーニングで除去できる程度のタバコのヤニなどは、通常損耗とみなされ、その修繕は貸主負担となります。

2.借主の費用負担(原状回復
 建物賃貸借契約において、借主に義務として課されている「原状回復」とは、退去時に、借主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借主の責任によって生じた損耗やキズなどを復旧することとされています。考え方としては、借主が善管注意義務(善良なる管理者としての注意義務)に反して、物件を壊したり汚したりした場合には、借主は原状に回復するよう求められます。
 具体的には、タバコによる畳の焼け焦げ、キャスター付のイス等によるフローリングへのキズ、へこみ、引越作業等で生じたひっかきキズ、結露を放置したことにより拡大したカビ、シミなどは、借主負担となります。

 以上の点については、不動産の賃貸を行う上では事前によく認識しておいた方がよいでしょう。



[FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社 大倉修治]
     
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